2011年5月15日日曜日

ブタナ

[2011/05/14  千葉県印西市]
空き地に繁茂する見なれた植物

[2011/05/14  千葉県北総花の丘公園]
タンポポに似た花、ロゼット、葉のない細長い茎


【分類 / 学名】

科: キク科 Asteraceae
属: エゾコウゾリナ属 Hypochaeris
種: ブタナ Hypochaeris radicata L.
英名: catsear / flatweed / false dandelion
仏名:  Chicorée pays / Chicorée-commune / Lastron sauvage /
            Porcelle enracinée / Salade de porc /  faux pissenlit
原産地: ヨーロッパ


【観察】

北海道、本州の広範な地域で見られるとのことですが、ここ北総でも基本の野草と言えそうです。日あたりのよい空き地などがあると、必ずといってよいほどこのブタナが見られます。遠くから見るとタンポポと間違いそうなのですが、近くから見れば誤認の恐れはなさそうです。

個人的な識別ポイントは、以下のようなものです。
1タンポポのようなロゼットがある。
2.葉のない細い緑色の非中空の茎が長く伸びており、一本だけの茎ものもあれば、途中で枝分かれしている茎もある。 
3.それぞれの茎の上端に花が一つつく。
4.花が終わるとタンポポのような綿毛になる。

タンポポとの識別のポイントは、薄黄緑色の中空の茎のタンポポに対して、ブタナは非中空で、細くて長くて固い緑色の茎です。


【話題】

タンポポモドキ
うっかりするとタンポポと見間違いそうなので、タンポポモドキとの異名もあるそうです。英語では、false dandelion、フランス語では、faux pissenlit と同じ発想の俗名がついているところが興味深いです。

<意外に多いタンポポに似た花>
タンポポに似た花がブタナだけならことは簡単なのですが、ブタナ以外にもタンポポのような花をつける植物は決して少なくないことに最近気づきました。タンポポとブタナの識別がタンポポに似たいろいろな花を楽しむための最初の一歩になりそうです。

<日本への導入>
ブタナは1933年に北海道で初確認され、その後、全国に広がったと言われています。その経緯が「北海道ブルーリスト」で分かります。
参考URL:http://bluelist.ies.hro.or.jp/db/detail.php?k=08&cd=440

<国立環境研究所侵入生物データベース>
このサイトの日本地図には特定の生物が日本のどこに繁茂しているかが描かれています。ブタナのページの日本地図は真っ赤で、ブタナが日本全土に広がっていることを示しています。なおブタナは「要注意外来生物」に指定されているとのことです。
参考URL:http://www.nies.go.jp/biodiversity/invasive/DB/detail/80570.html

要約すると、1933年に真駒内で初めて確認され、その後、全国に広まった。導入された原因は、牧草、緑化用の輸入種子に混入していた、となります。

<ブタナの命名の由来>
フランス語の俗名の一つ、Salade de porc (豚のサラダ菜)の日本語訳がブタナの名前の由来です。また、porcelle もブタporc を含む語です。それどころか、学名のHypochaeris すらもギリシャ語の「キクヂシャ(Hyosiris)」+「ブタ(choiros)」からできた言葉と考えられているようです。つまり、この植物とブタの因縁はかなり深く長いようです。

<豚が食べるのか?人が食べるのか?>
ヘビイチゴをヘビが食べるわけではないし、カラスノエンドウをカラスが食べるわけでもない、とすればブタナと命名されていても、ブタが食べるかどうか疑わしいと考えました。そこでフランス語のサイトを調べてみると、やはりブタが好んで食べるためこの名がついたようです。

ある獣医学校のサイトに以下のような記述がありました。
" Il est à noter que la porcelle est considérée comme commestible pour l’homme ;  On l’appelle également la porcelle "salade-de-porc" car le porc (en grec Choiros ) est réputé apprécier cette plante"
(訳:ブタナは人が食べることができるとみなされていることに留意すべきです。また、同様にブタナを「ブタのサラダ菜」と呼びますが、それはブタ[ギリシャ語ではChoiros]がこの植物を好むとみなされているためです。)
参考URL:http://centre-equestre-veto.envt.fr/spip/spip.php?article268

次に、人間(フランス人)が本当にブタナを食べているのかという話題ですが、これは「日本人は本当にイナゴを食べているのか」という質問に似ていると思います。

簡単に言えば、ブタナはフランスの一部の地域でローカルな食材として食べられており、イナゴは日本の一部の地域でローカルな食材として食べられているということです。そして、その食材を食べる習慣がない人たちは、「えっ?△△地方ではブタナ(イナゴ)を食べるの?それは驚いた。」という反応を示すものです。フランスのブログなどでこのような反応をしている人たちを直接、確認しました。

英語版のWikipediaにはブタナの料理に関する記述がありましたので、英語の勉強の教材として以下に載せておきます。

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【英語の練習】

"All parts of the catsear plant are edible; however, the leaves and roots are those most often harvested. The leaves are bland in taste but can be eaten raw in salads, steamed, or used in stir-fries. Older leaves can become tough and fibrous, but younger leaves make for good eating. In contrast to the edible leaves of dandelion, catsear leaves only rarely have some bitterness. In Crete, Greece, the leaves of a variety called pachies (παχιές) or agrioradika (αγριοράδικα) are eaten boiled or cooked in steam by the locals.
The root can be roasted and ground to form a coffee substitute."
参考URL:http://en.wikipedia.org/wiki/Catsear

訳:ブタナの全ての部分が食べられますが、葉と根がもっともしばしば食用に採取される部分です。葉は無味ですが、(サラダで)生で、蒸して、あるいは、炒めて食べることができます。葉は成長すると固く繊維が多くなりますが、若い葉は美味しく食べられます。タンポポの食べられる葉とは対照的に、ブタナの葉にはきわめてまれにしか苦みがありません。クレタ島やギリシアではpachies または agrioradika と呼ばれる品種の葉が土地の人々によって、茹でたり、蒸したりして食されています。根は炒って挽いてコーヒーの代用品にされます。

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